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「家を買った方がお得」のウソ: 今の家賃と同じ支払いで家は買えません

最近、住宅ローンの金利が本っ当に低いですよね。変動金利だと1%を切るなんてザラですからね。

こんな状況なんで、マンションの見学に行った時、「頭金なしでも、今の家賃と同じ月々の支払いで家が持てますよ」っていう営業トークをよく耳にしますよね。

「よく」っていうか、ほとんどすべての物件でこの売り文句を聞きます。

例えば、こんな感じの広告、見たことありませんか?

アナタの家賃と比べてみてください!!

  • 当社物件 (3LDK, 4390万円)を購入:  月々のローン支払い ¥123,923
  • 近隣の同等の新築3LDK物件を賃貸 :  月々の家賃 ¥165,000

購入した方が月々4万円もお得!!

*ローンは全額頭金、変動金利1%にて算出

実はこの広告は、miyaneが最近見学したマンションの売り文句をもとに作成しています。

 

これ、とても魅力的に見えますよね。今の家賃より安い支払額でピッカピカの家に住めるなら、いっそ買っちゃおうか?って思っちゃいますよね。

 

でも、ちょっと待ってださい。実はこの話には落とし穴があるんです。

冷静になってみると当たり前なんですが、購入した方が賃貸より絶対に得、なんてオイシイ話、本当にあると思いますか?

本来、家を購入してお得なのは、「いい(投資対効果が高い)物件を選べた場合」に限るはずです。

それ以外の場合は、市場原理により、どちらもお得度は変わらないはずです。

 

それでは、なぜこの広告を見ると購入した方が絶対お得に見えてしまうんでしょうか。「家賃と同じ金額で新築物件に住める」というセールストークの落とし穴について見ていきましょう。

「家賃と同じ支払いで家を持てる」の盲点

管理費・修繕積み立て・税金がかかる

まずは基本から。これはマンション購入を検討したことのある方なら知っていると思います。

マンション購入時にはローン支払い以外に修繕積立金、管理費がかかります。

ちなみに、実際には固定資産税もかかりますが、住宅ローン減税で当面は相殺されるので、ここでは無視します。

先ほどのマンションですと、

  • 修繕積立金: ¥5,000
  • 管理費: ¥15,000

がローン支払い額に加えて別途かかります。

月々2万円です。馬鹿にならないですよね。

 

では、先ほどの広告で、修繕積立と管理費を考慮した月々の支払額を考えてみましょう。

  • 購入した場合: ¥143,929
  • 賃貸した場合: ¥165,000

まだ2万円ほど購入した方がお得ですね。

「じゃあお買い得じゃん!!」って思った方、まだ罠にはまってますよ。

まだ2つ、落とし穴があるんですから。

物件は年々古くなるのにローンの支払い金額は変わらない

建物ってだんだん古くなるんです。ずーっと新築の家に住めるわけじゃないんです。

当たり前じゃん、って思うかもしれませんが、住宅購入に向けて舞い上がっちゃうと、忘れちゃいがちなんですよね。

新築のキレイな家に住んでいる (近い)未来の自分たちしか想像しませんから。

 

さてここで問題です。建物が古くなると、賃貸物件の家賃はどうなりますか?

安くなりますよね。

ではさらに問題です。建物が古くなると、住宅ローンの支払いはどうなりますか?

答えは「変わらない」です。

これが2つ目の落とし穴です。

 

住宅ローンとは、超長期の支払い契約を伴う金融商品なんです。これを忘れてはいけません。

そもそも、このような金融商品の支払いと家賃とを比べるのが間違いなんです。

住宅ローンとは、例え建物が壊れて住めなくなろうとも、その後支払い続けなければならないものです。そういう長期契約なんです。

むろん、経年劣化で建物の価値が下がろうと、支払う金額は変わりません。

このようなリスクを伴う商品だということを、決して忘れてはいけません。

 

それでは、経年劣化を考慮すると、月々の支払の差はどうなるのでしょうか。

賃貸物件の場合、だいたい1年ごとに1%の割合で家賃が安くなると言われています (三井住友トラスト基礎研究所)。

つまり、10年後には家賃は1割減で、20年後には2割減となります。

これを考慮すると、賃貸の場合の5年ごとの家賃は、こうなります。

築年数 新築 5年 10年 15年 20年 25年 30年
賃貸 16.5万 15.7万 14.9万 14.0万 13.2万 12.4万 11.6万

築15年目で、購入した場合の月々の支払14万4千円を超えてしまいます。

そうです。賃貸の方が得になっちゃいました。

 

でもですよ。まだこれで終わりじゃないんです。さらにもう一つ、罠があるんですよ。

購入の場合は月々の支払額が年々増える

マンションを買った後ローンを支払い終えるまでの期間で、月々の支払いが一番少ないのはいつでしょうか?

そうなんです。新築時なんですよ。住宅ローン減税がある上、修繕積み立てが安いからです。

住宅ローン減税は築後10年、固定資産税の減免措置も5年で終了しますね。

修繕積立も、大抵は5年ごとに増額するように計画されています

つまり、マンション購入の場合は、年数を経るにつれて、月々の支払いがむしろ増えるんです

どんどん家賃が安くなる賃貸と比べると対照的ですよね。

 

だんだん試算するのが怖くなってきましたが (笑)、賃貸時と購入時の月々の支払額を比較してみましょう。

修繕積立費は、miyaneが見学したマンションの場合にならって、こんな感じで増額するものとします。(築30年目以降は同額です。)

築年数 新築 5年 10年 15年 20年 25年 30年
修繕積立 0.5万 0.5万 1.0万 1.5万 2.0万 2.5万 3.0万

また、固定資産税は、住宅ローン減税がなくなる10年目から、年間12万円 (月々 1万円)かかるものとして計算します。

これらの費用を加味すると、賃貸と購入の月々の支払の本当の比較はこうなります!!

築年数 新築 5年 10年 15年 20年 25年 30年
賃貸 16.5万 15.7万 14.9万 14.0万 13.2万 12.4万 11.6万
購入 14.4万 14.4万 15.9万 16.4万 16.9万 17.4万 17.9万

築10年を境いに、賃貸の方が月々1万円以上安くなり、その差が年々広がっていきます。

そしてなんと!!購入後30年の時点では、月々6万円以上も賃貸の方が安くなってしまいます。

最初に広告を見たときに感じた、「買っちゃったほうが得かも」という印象とは全く異なる結果ではないでしょうか。

住宅購入の落とし穴、恐ろしいですね。

まとめ

「購入したら家賃と同じ支払いで家を持てますよ」っていうのは定番のセールストークなのですが、これを鵜呑みにして住宅を購入すべきではありません。

購入直後は、

「マンション買ってよかった!こんなに新しいピカピカの家に住んでも、周りの家賃より全然安い!!」

っていう感覚だったとしても、購入後15年くらい経つと、

「結構古くなったなぁ。でも修繕積立が高くなって、新築の頃より毎月の支出は数万円増えてるし。周りの築15年くらいのマンションと比べると、かなり割高じゃない?」

ってなっちゃうんです。

住宅を購入するときは、セールストークや広告の内容を鵜呑みにせずに、慎重に考えた方がいいですね。

 

ちなみに、miyaneは賃貸派ですが、購入派を全否定しているわけではありません。

本当に気に入った物件であれば、ぜひ買うべきだと思います。

ただ、「買った方が得かも」という幻想に惑わされて、よく考えもせずに家を買っちゃうのはすごくもったいない!!という思いから、今回の記事を書きました。

 

 

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