住宅購入を検討する理由で特に多いのが、「買った方が得だから」という理由ではないでしょうか。
しかし、以前こちらの記事に書いたように、必ずしも持ち家の方が賃貸よりお得だとは言い切れません。
「家を買った方がお得」のウソ: 今の家賃と同じ支払いで家は買えません
今回は、家の購入理由としてよくあげられるものの、実際には正しくないものについてお話します。
家の購入は人生で一番大きな買い物です。
間違った情報に踊らされずに、慎重に検討したいものです。
よくある間違い①: 賃貸は家主の利益がのるので買った方が得
なぜ家を買った方がいいかを議論すると必ず挙げられる理由ですね。
不動産の大家さんは、家賃収入で利益を得ているわけです。
ですので、賃貸派は大家さんの利益分、払い損していることになります。
一方、持ち家派は自分の家に住んでいるだけですので住居費が割安になる、という主張ですね。
一見もっともらしいんですが、この主張は完全に間違いです。
だって、持ち家派だって中間マージンをバンバンとられてるからです。
例えば、マンションを購入するとき。
マンションは販売業者から買うわけですが、物件価格には販売業者の利益がのっています。
一般的には物件価格の20%が手数料といわれているので、かなり大きな金額ですよね。
また、ローン金利も忘れてはいけません。
ローンの金利は銀行の利益になるわけですから、これもムダな支出ですよね。
このように、賃貸と持ち家では、両方とも中間マージンが取られる仕組みになっています。
その支払先が違うだけです。
賃貸の場合は大家さんですが、持ち家の場合は販売業者や銀行になります。
ですので、「大家さんの利益分賃貸は損」という主張は明らかにおかしいです。
よくある間違い②: 今は低金利だから買った方がいい
たとえローン金利が低くても、必ずしも買い得とは限りません。
なぜなら、金利が下がると物件価格が上昇する場合があるからです。
例えば、以下のケースを考えてみましょう。
- ケース①: 物件価格4,250万円、金利2% (35年固定)
- ケース②: 物件価格5,000万円、金利1% (35年固定)
ケース①は物件価格が低い一方、金利が高くなっています。
ケース②は逆に、物件価格が高く金利が低くなっています。
全額ローンを組んだとすると、実はケース①とケース②で月々の支払額はで同じになります。
どちらも月々14万円のローン返済です。
つまり、金利が下がれば、物件価格を上げても購入者の負担は変わらないんですね。
であれば、マンション販売業者は、ローン金利が下がるにつれて物件価格を吊り上げることができるわけです。
実際、ここ数年マンション価格は上昇していますが、日銀の異次元緩和によってローン金利が歴史的な低水準になったことがその原因と指摘されています。
よくある間違い③: 住宅を買うと減税になるから買った方がいい
住宅ローン減税とは、住宅ローン残高の1%分を所得税から控除できる制度です。
「払う税金が減るなら、買った方が得じゃん」と思ってしまいがちですが、そうではありません。
住宅ローン減税はそもそも、住宅取得後に税負担が重くなるのを軽減するために作られたものです。
まず、住宅購入後は固定資産税を支払わなければならないですよね。
また、ローンを借りているわけですので、ローンの金利も支払っていることになります。
これらは、賃貸の場合は支払わなくてよい金額です。
住宅ローン減税の目的は、家を購入することで増えるこれらの負担を一部相殺することです。
例えば、住宅ローンの残高が4,000万円ある場合、住宅ローン減税は最大で年間40万円の減税効果があります。
ですが、住宅ローンを1%の金利で借りている場合、そもそも金利負担が年間40万円あるわけです。
ですので、住宅ローン減税とは、ざっくりいうと「住宅ローンの金利を1%分軽減する」措置に他なりません。
つまり、住宅ローンの金利が1%だった場合に、住宅ローン減税でちょうどローン金利の負担分を相殺できるわけですね。
実際には住宅ローンだけでなく、固定資産税も払わなければならないので、結局のところ家計負担は増える計算になります。
ですので、「住宅ローン減税があるから買った方がお得」というわけではないです。
まとめ
今回は、住宅購入を検討する際によくある3つの勘違いについてお話しました。
住宅購入はとても大きな決断です。
後悔しないように慎重に検討しましょう。